0|なぜこのAIブログを始めたのか 生成AIを実務に組み込み始めたとき、 私が直面したのは「使い方」ではなく、
AI実務ログ: AIの答えが「判断不能」になる理由
0|実験ログ:あるプロンプトを試してみた
私はマーケティング支援の仕事をしているため、
外部のマーケティング講座や記事をチェックすることが多い。
特に最近は、
「AIを使ったマーケティング分析プロンプト」
のようなものが紹介される機会が増えている。
実務で使えるものがあるかどうか、
気になったプロンプトは、なるべく一度は実際に試してみることにしている。
ちょうどその頃、
ある企業のマーケティング支援で、
「初めてメルマガを立ち上げる担当者」
の相談に乗っていた。
メルマガ配信ツールを導入するにあたり、
- どんなユーザーが検索するのか
- どんなキーワードを狙うべきか
を考える必要があった。
そこで、ある講座で紹介されていた
ペルソナ生成プロンプトを試してみることにした。
プロンプトの詳細はここでは省略するが、
大まかな流れは次のようなものだった。
- 検索キーワードを予測する
- 検索ユーザーの属性を推測する
- 背景ストーリーを作る
- 悩みを深掘りする
- ペルソナとしてまとめる
いわゆる、
検索ユーザーの人物像をAIに作らせる
タイプのプロンプトである。
1|AIの回答
AIはすぐに回答を出した。
例えば、検索キーワードとして出てきたのはこういうものだった。
- メルマガ 始め方 企業
- メルマガ ツール おすすめ
- メール配信システム 比較
- メール配信システム 料金 相場
さらにAIは、それらを検索意図ごとに整理してくれた。
例えば、
ノウハウ系
- メルマガ 始め方
- メルマガ 書き方
比較検討系
- メルマガ ツール おすすめ
- メール配信システム 比較
コスト検討系
- メール配信システム 料金
- メール配信ツール 費用
かなり綺麗に整理されている。
さらに、
それらを検索するユーザー像として、
- マーケティング担当になったばかりの社員
- メルマガを初めて担当する広報
- メール配信ツールを選定する担当者
などの人物像が提示された。
一見すると、
かなりよくできたマーケティング分析
のように見えた。

2|しかし、ここで手が止まった
ここで、ふと手が止まった。
私はこう思った。
これは、本当に分析なのだろうか?
出てきているキーワードは、
確かにそれらしい。
しかしよく考えると、
すべて推測である。
Search Consoleでも
広告データでもない。
検索ボリュームのデータでもない。
AIが、
インターネット上の一般的な知識をもとに
それらしく生成したものだ。
つまりこれは、
データ分析ではない。
いわば、
「それっぽい仮説」
である。
3|もう一つの違和感
さらに、もう一つ違和感があった。
AIの回答は、
非常に綺麗にまとまっていた。
しかし、
綺麗すぎた。
引っかかりがない。
どこから手をつけるべきか、
決められない。
それぞれは正しそうなのに、
戦略が浮かんでこない。
4|AIの答えが判断不能になる構造
少し整理してみると、原因ははっきりしていた。
AIが出してくるのは、
- 平均的なキーワード
- 平均的なユーザー像
- 平均的な悩み
つまり、
インターネット上の平均値
である。
しかしマーケティングの意思決定とは、
どこを攻めるかを決めることだ。
そしてそれは同時に、
何を捨てるかを決めることでもある。
ところがAIの出力は、
すべて平均点。
すると、
捨てられない。
結果として、
判断が止まる。
これが、
AIの答えが判断不能になる構造
だった。
5|実務で試している小さなプロセス
AIの回答は、そのままだと判断が止まることが多い。
そこで私は、次のような順番でAIを使うことがある。
①生成
まずAIにキーワードを出させる。
これは、
材料集め
である。
②解体
次にAI自身にこう聞く。
例えば、
- この分析の前提は何か
- 間違っている可能性はどこか
- 見落としている顧客はいるか
これは、
AIが出した
「完璧な平均値」
というメッキを
少しずつ剥がしていく作業だ。
こう質問すると、
AIの回答は
絶対の正解
から
仮説
に変わる。
ブラックボックスだった答えが、
構造として見えてくる。
③評価
その上で、評価軸を与える。
ここでのポイントは、
人間が評価するのではない。
推論したAI自身に、
自分の回答を評価させる。
例えば、
- 成約に近い検索か
- 競合の強さ
- 自社の強みとの相性
こうしてAI自身に説明させると、
ただのキーワードリストだったものが
優先順位のある判断材料
に変わる。
④判断
ここで初めて、人間が判断する。
例えばこうだ。
「多少リスクはあるが、
自社の強みが活きる
このニッチなキーワードから記事を書こう」
こうして、
実務としての
GOサイン
が出せる。
6|AI実務の三つの壁
AIを実務で使うと、
次の三つの問題にぶつかる。
拡張
↓
停止
↓
判断
AIは拡張が得意だ。
整理すれば、
拡張は止められる。
しかし最後に残るのが、
判断
である。
今回のログは、
AIの完璧な平均値が
判断を止めてしまう
という構造だった。
次回は、AIの回答に差分を作る方法について、
もう少し実験ログを書いてみようと思う。