AI実務設計ログ

「BtoB×AI検索」に答えはあるのか?中小企業のためのGEO実験ログ

作成者: 椎名真弓|May 26, 2026 2:54:45 PM

AI検索やGEOという言葉は増えてきた。 けれど、BtoBで——特に専門性が高く、予算も工数も潤沢ではない現場で、 何から始めればいいのかは、まだはっきり見えていない。 外部の専門会社に丸ごと頼める企業なら、選択肢はある。 けれどそうではない企業のほうが、現場には多いと感じている。

私はフリーランスのBtoBマーケターで、椎名真弓という名前で活動している。 BtoBマーケティングは仕事として請け負っているが、 GEOやAI検索対策については「これが正解です」と言える立場にない。 それでもこのログを書き続けているのは、クライアントの現場で、 答えのない問いに毎日ぶつかっているからだ。

この記事では、なぜ個人でGEOの実験ログを公開しているのか、 その背景と、このログの使い方を書いておく。

 

クライアントの現場で見えていること

私はBtoB企業のマーケティング支援を仕事にしている。 特に多いのが、専門性が高く、説明が難しいビジネスを扱う企業だ。 規模はさまざまで、大企業の現場に入ることもある。 ただ、共通しているのは「マーケティング専任の体制が整っていない」 「外部の専門会社に丸ごと頼める予算がない」という状況だ。

その共通項を整理すると、4つの層に分かれて見えてくる。

層1:そもそも、何で見つかっているのか分からない

お客さんがどんなキーワードで自社サイトに来訪しているのか、 どんな経路で接触しているのかが、把握できていないケースが多い。 SEOの競合が多いか少ないかを議論する以前に、 自社が何で戦っているのかが見えていない、という状態だ。

層2:専門性はあるのに、Web上に残せていない

専門性が高すぎて、社内で書ける人が限定される。 書き手そのものは、生成AIの登場でハードルが下がり、 外部にも一定数いるようになってきた。 ただ、内容の正しさを判定できる「監修できる人」が社内に限られていて、 書く速度に対して、品質を保証する体制が追いついていない。 結果として、Web上に蓄積される情報量が、自社の専門性に追いついていない。

層3:営業が聞けている声だけでは、顧客の全体像が見えない

BtoBの営業は、購買部門だけでなく、 企画・開発をはじめ、複数の部門に広くアプローチしている。 それでも、窓口に立つ人の背後にいる大勢の関係者や、 意思決定を握るキーパーソンの声は拾いにくい。 さらに、顧客企業の先にエンドユーザーがいる場合、 そことの接点がないと、全体像が見えない。 営業の現場で聞こえてくる声と、実際の意思決定で起きていることの間に、 見えない距離があると感じている。

層4:営業に来る前に、すでに候補から外れているかもしれない

BtoBの商談プロセスは長く、複数部門が関わる。 怖いのは、お客さんが営業に接触する前に、 Web上だけで情報収集と一次選定を終えてしまっている可能性があることだ。 その期間に何が起きているのかが、社内からは見えない。

そしてここに、AI検索という新しい変数が加わった。 ユーザーが「Web上で情報収集する」という行為そのものが、 検索エンジンへのキーワード入力から、AIへの問いかけに変わりつつある。 営業が接触する前のブラックボックスが、 さらに見えにくくなっている可能性があると考えている。

 

だから「正解探し」ではなく「仮説検証」が必要だと考えた

こうした課題に対して、 「正解を教えてくれる本やセミナー」を探すというアプローチもある。 ただ、AI検索の領域では、それが機能しにくいと感じている。 再現性のある方法論がまだ確立されていないように見えるからだ。 Google自身も、2026年5月に公開したAI最適化ガイドの中で、 GEO・AEOへの言及の仕方を慎重に調整している。 公式の側でも、まだ表現が揺らいでいる段階だと受け取っている。

それなら、正解を探すよりも、 自分で小さく試して、観察して、仮説として残していくほうが、 今は現実的なのではないかと考えている。

大規模な検証ではなく、n=1でもいい。 実験条件と、観察結果と、自分なりの解釈を明示すれば、 同じ立場の人——フリーランス、中小企業のマーケ担当、兼任で広報やマーケをやっている人——にとって、 何かを考える材料になる場面もあると考えている。

AI Alchemy Labは、その小さな観察を積み重ねるための場所として始めた。

 

 

AI Alchemy Labで観察していること

具体的にどんな観察をしているのか、直近の例を一つだけ紹介する。

直近の実験では、Perplexityに対して、 広さの違う3種類の問いを9回投げて、引用結果がどう変わるかを観察した。

結果は対照的だった。 「GEOとは何か」のような広い問いでは、3記事すべて引用されなかった。 「AI Alchemy Labの実験ではどんな結果が出たか」のような固有の問いでは、3記事すべて引用された。 その中間の問いでは、3記事のうち1記事だけが引用された。

意外だったのは、引用部品性スコア(構造の整い度合いを数値化したもの)が低い記事でも、 固有の問いに対しては引用されたことだ。 ここから、ひとつの仮説が浮かんできた。

記事の中身を整える前に、どんな問いで見つかりたいかを設計する必要があるのではないか。

これは、専門性が高く、予算も工数も限られた現場にとっては重要な問題だと考えている。 検索ボリュームの大きい一般語で勝てなくても、 自社の経験や事例に紐づく固有の問いなら、AIに拾われる余地があるかもしれないからだ。

この種の観察と仮説は、これまでの実験を通じて少しずつ積み上がってきている。 これまでに整理した仮説と、暫定的に置いているルール候補の一覧は、 別ページにまとめている。

これまでの仮説と暫定ルール一覧へ(近日公開予定)

 

このログでやること

このログでやっていることは、シンプルだ。

1. 実験条件を書く

どのプラットフォームで、いつ、どんな条件で観察したのかを明示する。 これがないと、結果の意味が変わってしまうからだ。

2. 観察結果を、成功も失敗も両方残す

引用されたケースだけでなく、引用されなかったケースも記録する。 未引用の結果のほうが、次の仮説の起点になることが多いと感じている。

3. 結果を仮説として書く

「こうすれば必ず引用される」ではなく、 「この条件ではこう見えた、だからこういう仮説が立つ」という書き方を基本にしている。

4. 小規模事業者・兼任マーケターの判断材料になる形で公開する

専門家のための専門記事ではなく、 自分のクライアントワークで使いながら、その過程で見えたものを書いている。

 

 

このログでやらないこと

逆に、やらないこともはっきりさせておきたい。

1. 大規模調査のふりはしない

n=1の観察を、n=1のまま誠実に書くことが、このログの役割だと考えている。

2. 専門家としての断定はしない

私はBtoBマーケティングの実務者ではあるが、 GEO/AI検索の専門家を名乗れる立場にはいない。

3. 成果保証はしない

「この手順通りにやれば引用される」とは言えない領域だと考えているからだ。

4. GEOノウハウのパッケージ販売もしない

このログは観察記録であって、商品ではない。

 

結び:このログをどう使ってほしいか

このログは「答え」ではなく、 「同じことを考えている人のための観察ノート」のつもりで書いている。

専門性の高いビジネスを扱いながら、 マーケティングに割ける人手も予算も限られている現場で、 AI検索という新しい変数に向き合っている人。 社内で監修体制が追いつかない中、それでも情報資産を積み上げようとしている人。 営業の前段がブラックボックス化していくことに、危機感を持っている人。

そういう方々にとって、考える材料になる場面が一つでもあれば、 このログを書いている意味があると思っている。

日々の観察や、仮説が更新された瞬間の記録は、Xに先に投稿していることが多い。 もし関心が重なる部分があれば、覗いてみてください。